2020年03月01日
建築、インテリア、そして庭園が融合した、美しい空間の大切さを学びました。 〜マギーズ・ロンドン Maggie's London 訪問〜
真冬の英国、ロンドン。
今回の渡英で、どうしても訪問したい場所がありました。
マギーズ・ウエスト・ロンドン(Maggie's West London)です。
英国発祥のマギーズ・センターは、
がんになった方や、その家族、友人等、
誰でもが気軽に訪れることが出来る場所です。
その設立は、造園家であり造園史家であった、
英国のマギー・K・ジェンクス氏が、
自ら、がんに直面する中、
「自分を取り戻せるための空間やサポート」を造ろうと力を尽くし、
その遺志を受け継ぐ形で、1996年オープンしました。
一言では説明できないので、詳しくは是非こちらをご一読ください。
https://maggiestokyo.org/concept/
そして、長年、訪問看護師として貢献されてきた秋山正子氏が、
その存在を知り、深く感動されて、
日本にも実現させたいとの強い想いの元、
多くの方が賛同され、東京・豊洲に2016年の秋に実現しました。
マギーズ東京
https://maggiestokyo.org/
私がその存在を初めて知ったのは、まだ2年半ほど前のこと。
所属するJAG(ジャパンガーデンデザイナーズ協会)に、
『BISES』元編集長の八木波奈子氏からお声がけいただき、
周辺の花壇作りを、
地元住民の方や、他の団体の皆様、仲間とともに、
お手伝いする機会をいただくようになりました。
(私は遠方在住で、時々だけ参加しています。)
そして、東京で
『マギーズセンターの建築と庭
− 本来の自分を取り戻す居場所 −』展が開催されることになり、
(注:4月8日時点:新型コロナウィルス感染拡大防止のため、現在閉館となっております。
動画にて、展示室が公開されておりますので、詳しくは文末をご覧ください。)
JAGが、展示の植栽を担当させていただくということで、
渡英する機会に現地を訪問し、
作庭にあたり、
意志やイメージを共有したいと思ったのです。
そこで、マギーズ東京のご了解を得て、
思い切ってロンドンにメールで連絡してアポイントを取り、
2月後半に訪れました。
ロンドンの喧騒を忘れさせてくれる森の小径
入り口には石に掘られたmaggie'sの文字。
マギーズには、訪れた患者さんの不安が軽減されるよう、
(大きな窓がある、安全な中庭がある等)様々な規定があります。
その根底には、建築とランドスケープ(庭)が
一体となっている、安心できる空間、という考えがあり、
現在、英国内外20か所以上(英国21か所・香港・東京・バルセロナ)となったセンターは、
いずれも、一流のプロによりデザインされており、
その美しさから、写真集として出版されているほどです。
(Amazonより写真をお借りしました。)
今回訪問した、
ロンドン南西部の、
巨大なCharing Cross病院の敷地内に建つマギーズ・ウエスト・ロンドン。
https://www.maggies.org/our-centres/maggies-west-london/
ウェブサイト等で拝見していましたが、
詳細は知らないまま、建築のオレンジ色に自然と導かれ、
入り口へと向かいました。
右側のエントランスからのぞくと、
”Come in, come in,” と笑顔で手招きしていただき、中へ。
事情を説明すると、
しばらくして、施設長のSineadさんが、
素敵な笑顔で現れました。
改めて、訪問の目的をお話ししたところ、
大変共感してくださり、
じっくりとお庭をご案内いただきました。
(※写真はご了解のもと撮影、投稿しています。)
庭園のデザインには、マギー氏の夫や娘さんのほか、
Dan Pearson氏も関わっておられます。
チェルシーフラワーショウでも、
ゴールドメダルや、Best Show Garden(優勝)を受賞されている、
素晴らしい、ランドスケープデザイナーです。
先ほどの森の小径も、ピアソン氏のデザインによるもの。
Sineadさんも、毎朝の出勤の際にほっとするそう。
(現在も維持管理の方向性など
直接ピアソンさんに相談しているそうです。)
花の香りを楽しめる季節には、
「ロンドンの真ん中で花の香りに気が付くなんて、滅多にないこと。
その話題で持ちきりになるのよ。」と(^^)
そして、メインダイニングに面した中庭。
大きなテーブルが印象的な中庭は、
良い季節の時は、ガラスのドアを開け放ち、
屋外と屋内の区別なく、
ダイニングルームとして活躍するそうです。
大人気のメインツリーは「Silk Tree」。
「このピンクの花の美しさは、誰もが虜になるの」と、Sineadさん。
来訪者が作られたポストカードを見せていただくと、
「ネムノキ」でした。
寒い北国の英国。
少し、南国のイメージがあるネムノキが愛されるのも、分かります。(^^)
奥のコーナーには、
緑に囲まれた、一人になれる空間が。
天井もガラスになっていました。
反対側の中庭。
いずれもが、
一人になったり、静かに語り合うこともできる場所。
でも、窓の向こうには人の存在があり、
どこからも、緑が見えるよう、
丁寧にデザインされています。
二階には、様々な広さのバルコニーがあり、
良い距離感を保ちつつ、
少し街中を眺めたり、空を見たりしながら、
こちらも、ほっと出来る空間。
時々、イチジクやブドウを収穫して楽しんでいるそう。
病院の高層階からも、見られにくくなっています。
こちらは、春から夏には、
木々の葉っぱに完全に覆われる、広いバルコニー。
イベントの際は、キャンドルを灯すそうです。
ガーデン・ファニチャーも、
インテリアと同様、デザインコンセプトに基づいて、
全て、慎重に選ばれているそう。
「皆、意識的、無意識的に関わらず、この庭に助けられているの。
一日100名を超える来訪者がいるけれど、
人の声がしても、一人になれたり、静かな時間が過ごせたり、、、。」
と、説明してくださいます。
屋内と屋外が一体となり、
美しく心地良い空間と、植物の存在が、
どれほど実は深く、ひとの心に、
寄り添うことができるのか。
自らを省みながら、
言葉では表現できないような感情が押し寄せ、
「本物のデザインのちから」
そして、
「ガーデンデザイナーとして、
(それが、ほんの小さいことではあっても)
やるべきこと、やれること」を教えてくれた、
決して忘れることのできない訪問となりました。
お礼を述べていると、、、
「あなたの写真も撮りましょうよ。
せっかく来てくれたんですから(^^)」と、Sineadさん。
「今回の訪問で学んだことは、
必ず仲間と共有して、展示に生かします」と、約束し、
感謝の気持ちを改めて伝え、ハグをして、
帰路につきました。
皆様、展覧会に、ぜひ足をお運びください。
『マギーズセンターの建築と庭
− 本来の自分を取り戻す居場所 −』展
ギャラリー エー クワッドにて(東京都江東区)
注:新型コロナウィルス感染拡大防止のため、現在閉館となっております。(4月8日時点)
展示室が、動画にて公開されました。是非ご覧ください。
★★★動画はこちら↓↓↓★★★
http://www.a-quad.jp/exhibition/101/movie.html
http://www.a-quad.jp/exhibition/exhibition.html
(公式ページ)
https://maggiestokyo.org/2020/02/16/3%e6%9c%8810%e6%97%a5%e3%81%8b%e3%82%89%e3%80%8c%e3%83%9e%e3%82%ae%e3%83%bc%e3%82%ba%e3%82%bb%e3%83%b3%e3%82%bf%e3%83%bc%e3%81%ae%e5%bb%ba%e7%af%89%e3%81%a8%e5%ba%ad%e3%80%8d%e9%96%8b%e5%82%ac/
(マギーズ東京)
お読みいただき、ありがとうございました。
はまもとのりこ